ワインに恋Vol.02 小川由美子さん(日仏商事)
Ocean Dinners代表早坂恵美が気になるワイン関係者にワインとの出会いを聞く「シリーズ・ワインに恋」。第2回は妖艶(?)なイメージの小川由美子さんです。
聞き手・Ocean Diners 代表 早坂恵美
(私事的な序文)
由美子さんのあの落ち着きと色気はどこから来るのだろうと、出会った初日からずっと観察している。露出の多い服を着ているわけでもなく、どちらかと言えば露出度ゼロに近い装いで、常に微笑み、声のトーンは静かで、他を拒絶する事なく常にフラット。いつも観察していたら、とうとう由美子ファンになってしまい、由美子さんのおすすめのワインのファンにもなってしまった。と私もオヤジ化してしまったんだろうか(笑)会社名が日仏商事なのに、何故にイタリアワインなのだろうと言う、違和感が気になって仕方なかった。由美子さんがイタリアのワインを勧めるのはどうしてなんだろうと言う素朴な疑問を聞いてみた。今回はイタリアのワインを輸入するきっかけとなったお話に焦点を絞ったのだけれど、機会があればもっと知りたいことはたくさんある。もちろんわかってはいる。どんなに観察しても私には由美子さんの色気を習得はできないことくらい。
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早坂 ワインの仕事についてどれくらいですか?
由美子さん 今の会社に入社1年後から十数年ワインセラーを担当していたので、ワインの担当も始めたのが4年前ですから、そんなに長くはないです。
でも、十数年前から姉がイタリア好きで一緒によく一緒に旅行していました。姉はアートと、私は現地コーディネイターさんとトスカーナのワイナリー訪問から始めたら楽しくて、以後1~2年に1度はイタリアに行き、50以上の生産者さんを巡りました。
早坂 日仏商事さんはフランスのワインがメインですよね。そこにイタリアを入れるのは大変だったのではないですか?
由美子さん プライベートでイタリアのワイナリー巡りをした時に現地にお住いの方が私の趣向を感じ取り紹介してくださった、ピエモンテのファビオ・ジェアを輸入しようとしましたが、やはりなかなかOKが出ませんでした。何度も「もうダメかな」と諦めては、また思い直して交渉。5年くらいかかりました。会社もちょうどヨーロッパのほかのエリアにも目を向け始めてきたこともあってタイミングが合ったと言えます。
早坂 5年も!どうしてそんなに頑張れたのですか?
運命の1本に出会った瞬間、雷に打たれたような刺激でした。
由美子さん 8年くらい前のことですが、ファビオのバルバレスコのリゼルバを飲んだ時にものすごい衝撃を受けました。エレガントなのですが、普通にエレガントではなくその中に確固とした信念も感じるようなワインで。私、立って飲んでいたのですが、飲んだ瞬間に地面に接している足の裏から、雷に打たれたような刺激がまっすぐ脳天に突き抜ける衝撃でした。
「ああ、出会っちゃった・・・」とその時、そう感じました。
2009年のバルバレスコだったと思います。
エネルギーもあり、エレガントで、私の好みのストライクゾーンど真ん中。ドンピシャだったのです。だから、このワインを日本に入れたい、日本の皆様にこの感激を伝えたいと思いました。私からファビオにお願いして、承諾をもらったわけですから、諦められなかったわけです。
早坂 その醸造家のファビオってどんな人なのですか?
由美子さん 一言で言えば、永遠の少年で天才。お喋りで自信家(笑)。でもとても義理がたくて、先に日本に入れたいと言った人に私との約束を守ってくれていて、日本に輸入すると約束してから5年も経っていても、待っていてくれました。
早坂 ワインを通して伝えたいことはありますか?
由美子さん 世界中の人たちとつながっているみたいな感覚を伝えたいです。
ワインを飲むと、私が現地に行っているからかもしれませんが、手に取るように現地を感じます。セラーの仕事をしている時よりも、ワインを始めてから色々な方のつながりが増えました。仕事の絡み、損得なしでそんな話ができるような人々とどんどん繋がれるのはワインのおかげだと思います。ワインという同じ共通の話題があって。どんどん世界が広がる、この喜びを伝えたいです。
早坂 由美子さんってすごくミステリアスなイメージありますね。
由美子さん 私ね、ワインの旅をする前に一人で世界中の秘境を訪ねるのが好きだったのです。色々な国の世界遺産を巡っていました。突撃する癖があるのです(笑)。
早坂 突撃!? そんな感じには見えない(笑)
由美子さん 冒険はライフワークの中の一つ。生産者さんとの出会いを開拓するのは冒険です。
冒険して、実は、ワインを探しに行っているのではなく人を探しに行っているのかもしれません。造っている人となりは、ワインに反映していると断言できます。
優しい人のワインは優しい。
由美子 土と水と空で葡萄からワインはできるけれど、
ナチュールは造り手さんの性格が出ます。今は、コロナ禍で直接には会えないけれど、ワインを飲みながら、造り手さんの人柄の良さを味わっています。
おすすめには私が衝撃を受けたファビオのランゲロッソ(¥9400税抜)を選びたいと思います。エレガントで優しい。目を閉じて味わう、静かな喜びを。
*小川由美子さん
1975年千葉県出身。銀行員、ITベンチャーでのプログラマーを経て2007年に日仏商事入社。
きっかけは、子供の頃から冷蔵庫に常備していたイーストを始め製菓材料で社名を目にしていたから。
総務での入社1年後、ワインに近づきたい思いとともに現ワイン課へ転籍。業務に就く前から続けてきたワイナリー訪問を経て、生産者と向き合いながら日本市場への紹介を行う。