素晴らしい割烹のことを書くのに、
その料理や調理人のことではなく、
おしぼりの温度差についてから書くのが、
果たして、いいのか書かれた人は喜ぶのかわからないのだけれど、
ここから書き始めたい。
横浜・東神奈川の駅を降りて徒歩5分くらいの、路地に「太郎」はある。
日が暮れたとはいえ暑い中を歩いて行くと汗は滴り落ちる。
最近27キロも減量したナイスなメンズと
全く体重の落ちない同い年の女2人がたどり着いたときに
出されたおしぼりが、
氷水に一度つけて絞ったくらいのひんやりとつめたいものだった。
ちょっと驚くほどの冷たさで、汗がすうっとひいて行く。
料理が出始めて、終盤にかかった頃に、
もう一度おしぼりが出された。
あれ? 今度は普通の温度のおしぼり。冷たくもなく温かくもない温度。
その温度に今度はなんとなく安心感を感じた。
このタイミングでまたあの冷たいおしぼりが出たら、
エアコンで身体も冷えているし、ほろ酔い気分も覚めてしまい、
違和感を感じたんだろうなと思いながら、手を拭く。
なんてことない、
こんな事に小さく感激をする。
しかし、それを普通の飲食店さんで行った方がいいとは絶対に言えない。
席数が少なく女将や大将がお客の全てを把握できる状況でないと、こういう細かい心配りはかえって、従業員の負担になるから。
以前、横浜の東口でCRuがまだフレンチだった頃、当時の支配人は、
おしぼりを袋から出し、水洗いし、その水の中にほんの少しだけアロマオイルを入れていた。もちろんワインの香りを邪魔しない程度の微量。固く絞り、固く巻き直し、積み上げて行く。それは彼にしかできないことで、同じことを次の支配人がするかといえば、そうする意味と必要性がわからないと途絶えてしまった。しかし、それも時短と仕事の効率化の視点からは仕方がなかったとは思う。
飲食店で最初に出されるおしぼりは、その店(もしくは担当する人)のある意味、姿勢(美意識)みたいなものが現れると思う。
素材やトレイも大事だけれど、温度を違えて出していただいたのは初めてで少し感激している。もしかしたら、全く偶然だったのかもしれないのだけれど。
太郎のお料理は、京都・祇園の赴きそのもの。
それは、また後ほど。
割烹・太郎
221-0045 横浜市
神奈川県横浜市神奈川区神奈川2-18-6
お電話045-441-1029